DXの第一歩は、壊すことではなく『整える』ことから始まる。

〜「コード考古学」でレガシーシステムを資産に変える、持続可能な開発の形〜

「DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるには、古いシステムを捨て、最新環境へ一新しなければならない」

いま、多くの企業がこのような「スクラップ・アンド・ビルド」の圧力にさらされています。具体的には、以下のような状況です。

「負債」というレッテル貼り: 過去の知見が詰まったコードを、単なる「技術的負債」としてネガティブに捉える空気。

「最新=正義」という強迫観念: 最新技術を使わないことは時代遅れでリスクだという不安を煽られる。

ベンダー都合のリプレイス提案: 「保守切れ」を理由に、現存する資産を無視した全面刷新の二者択一を迫られる。

しかし、長年ビジネスを支えてきたシステムを強引に「壊す」ことは、企業が積み上げてきた歴史や、現場の細かな知見、そしてデータの連続性を失う大きなリスクを伴います。

私たちは考えます。DXの真の第一歩は、壊すことではなく『整える』ことから始まるべきではないでしょうか。


なぜ、安易なリプレイスは失敗するのか

多くのフルリプレイス(全面刷新)プロジェクトが難航する理由は、技術の古さそのものではなく、「ロジックとデータのブラックボックス化」にあります。

数千行に及ぶVBAマクロや、複雑に分岐した古いプログラム。そこには、仕様書には書かれていない「現場の例外処理」や「過去のトラブルから学んだ知恵」が凝縮されています。これらを「古いから」という理由だけで精査せずに捨ててしまえば、新しいシステムは動いても、ビジネスの根幹が揺らいでしまいます。

私たちは、現場のエンジニアとして、以下の3つのアプローチでシステムの「資産価値」を取り戻します。


1. データの「文脈」を整える(パターンの連続性による高精度検証)

システム移行において、最も恐ろしいのはデータの不整合です。特に「同一キーが複数存在するデータ」や「複雑な選択肢が並ぶ回答データ」を扱う際、単純な一括変換だけでは、データの取り違えや意図しない書き換えが起きるリスクがあります。

私たちは、単に項目を変換するだけでなく、データの「回答パターンの連続性」を多角的に照合することで、データの正確性を担保します。

  • 具体的には: 例えば、同じ科目名の回答が連続するデータにおいて、個別の行を特定するために「質問1から質問10までの回答値の組み合わせ」を一つの固有のパターンとして捉えます。変換後のデータにおいても、この「パターンの並び順」が元のデータと完全に一致しているかを全件チェックします。
  • なぜこれが必要か: これにより、行単位でのズレや変換ロジックの漏れを論理的にあぶり出すことが可能になります。単なる数値の合致だけでなく、データが持つ「相対的な順序」までを検証対象とすることで、確実なデータ移行を実現します。

2. システムの「設計思想」を紐解き、再構築する

「古い構造」と「新しい要求」がぶつかり合う過渡期こそ、エンジニアの腕の見せ所です。私たちは、過去の開発者がそのシステムに込めた「設計思想」を丁寧に紐解き、現代の最適な形へと再構築します。

  • 具体的には: 長年の改修で複雑に絡み合ったプログラムを解析し、ビジネスの核となるロジックは守りつつ、機能ごとに「モジュール化(部品化)」して切り出します。
  • なぜこれが必要か: 過去の設計思想を理解した上で、心臓部は安定させたまま、インターフェースや外部連携部分だけを最新技術へと「繋ぎ直す」ことが可能になります。この「段階的な進化」により、業務を止めるリスクを最小限に抑えつつ、システムを現代的な武器へとアップデートさせます。

3. 知見の継承を整える(コード考古学による復元)

「仕様書もなく、書いた本人もすでにいない。解読不能なコードをどうするのか?」 私たちは、これを「コード考古学(Code Archaeology)」という手法で解決します。過去の遺物を単なるゴミとしてではなく、価値ある歴史として掘り起こすプロセスです。

  • 動的解析: あえてテストデータを流し込み、出力の変化から「隠れた仕様」を逆算します。
  • 依存関係の可視化: 複雑な絡まりを解き、影響範囲が一目でわかる「構造図」や「データフロー図」を作成します。これが、現役のエンジニアが迷わずに改修を進められるための「地図」となります。
  • 実務との照合: コードから読み取ったロジックを現場の運用と突き合わせ、「なぜこの処理が必要なのか」という背景(Why)を明文化します。

「動いているコード」は嘘をつきません。私たちはその事実を積み上げ、属人化した技術を組織の共有財産へと整え直します。


日本の「金継ぎ」のようなエンジニアリングを目指して

壊れた器を漆でつなぎ、その跡を金で飾ることで、以前よりも価値を高める日本の伝統技法「金継ぎ」。

私たちのエンジニアリングも、そうありたいと考えています。システムの「古さ」を隠すのではなく、培われた価値を活かしながら現代に適応させる。その過程で、古い構造と新しい技術が調和した時、システムは以前よりも強固で美しい資産へと生まれ変わります。

「今のシステムを大切にしながら、次のステージへ進みたい」

そう願うお客様にとって、私たちは最も誠実な技術的伴走者でありたいと願っています。


[貴社のシステム診断・ご相談はこちら] お客様が積み上げてきた歴史を、私たちが責任を持って未来へつなぎます。まずは現在の悩みをお聞かせください。